「ずいぶんとその青い青年のことが気になるのね、士郎って・・・」
俺が話している途中で、遠坂が志貴と呼ばれるその青年について尋ね返してきた。
「そうだな、俺もあの男については、気を抜いたらまずい・・・と感じるものはあったな。目が・・・」
今までいろんな人間と出会ってきた。気が合うやつもいたし、あわないやつもいた、、、だけど、その誰もを俺は助けを請われればこの手をさしのべるつもりではいる。その青年をそんなに目の敵にしたつもりはなかったはずなのだが・・・
た
だ、あの青い透き通った瞳、何も欲しがらず救いすらも求めないあの悟りきった目が・・・俺とは異質に見えてならなかった。争いをなくす為に、平和を求め
て・・・求めるものは同じはずなのに、・・・届くかどうかわからないが・・・助けを差し出し与えようとする俺とは、その立ち位置はまるで逆のものを映す
瞳。
「士郎の話から察するに、それは魔眼よ。ときどき特殊な性質を帯びる魔眼持ちが現れることがあるけど、士郎の剣はその青年の持っていた短刀というよりも彼の魔眼の力によって消されたんだわ。士郎、そんな能力者と戦って大丈夫だったの?」
「ん?、
あぁ、あの後お互いにかなり殺り合ってね。俺も剣術とか鍛えていたし体力や腕力なら抑え込む余裕があったけど、体術なら向こうの方が上らしくて、かなり切
り込まれて実はかなり危ないところだった。打ち合うと俺の剣は消されるし・・・接近戦だと巧みにかわされ間合いに滑り込まれてばかりで不利を感じたか
ら、・・・・・・」
「・・・・・・奥の手を使った訳ね。」
「あぁ、俺の固有結界 Unlimited Brade Works を使わざるを得なかった。遠坂には感謝している、譲ってもらった魔術回路がおかげで役に立ったよ。弓を引く感覚であいつの届かない間合いまで距離を取った後、俺は投影した剣を放った。」
「じゃぁ、あっという間に倒しちゃったのね?」
「そうでもない。俺も驚かされたけど、俺が投影した剣の全てをあいつは次々と切り壊していったんだ。」
「士郎って固有結界を維持する魔力はまだそんなになかったはずよね。士郎、負けちゃったの?」」
「それは・・・負けはしなかった。けど、勝ってもいない」
「それって・・・・・・どういう意味?」
「俺の魔力・・・剣製が尽きる寸前に、あいつも力尽きて・・・お互いがこれ以上動けない状態になったんだ。あいつがスタミナの細いやつで俺も助かったよ。」
ぎりぎり引き分けに持ち込むことはできたが、再び、あいつと戦うことにはなりたくない・・・本当にそう思う。
からかうようなしぐさで遠坂は俺の話を聞いていた。
「ふ〜ん、それで残った女の人・・・そのアルクェイドって呼ばれる女の人はどうなったの?多分、彼女は先に倒れた教会の男が言っていた『真祖』っていう吸血鬼だというのは、多分本当のことよ。私も魔術協会づてに教会からの知識でそれは聞いたことがあるもの。」
「俺とあいつの、男二人の戦闘を眺めた後で、「志貴、そろそろ帰りましょうか」とか言って帰っていったよ」
「真祖というのは吸血鬼の中でも最上級の力を持っていたはずよ。士郎、もしかしたら・・・見逃してもらったのかもね。でも、まぁ士郎が無事に帰れてよかった。」
そうだな、本当にそうだ。あの時の目的は死徒を倒すことで、アルクェイドと呼ばれた真祖まで本来は戦わなくてもよかったはずなのに・・・・・・吸血鬼の力の恐ろしさを知らずに、うかつに手をだした俺は本当に軽率だったと思う。
二度とこんなことにならないように、遠坂のように知識を吸収して自分でも対策を練れるようにしておかないといけないな・・・。
同時に、あいつのあの瞳は何か大切な真実を映していたような気がする。俺にはその真実はまだわかりそうにないが・・・自分は理解しないといけない、そんな気がした。
少なくとも・・・
あいつが守ろうとしたその美しさは、俺にもわかる気がする。
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