そこには黄金の髪をした朱い瞳を持つ女が・・・驚くべきことに、血を求め荒れ狂うグール達を素手で次々に倒していた。
その女の動きは戦い慣れた男の俺でさえ、驚異を感じるほどの力と身のこなしで、舞っていた。
闇夜の漆黒の中で月光に浮かび上がるその美しさに恐らく俺は・・・見とれていたのだろう。
あの女は一体何者なんだと?
半ば呆然としながら、俺は様子を伺って見ていた。
女は俺のことには気づいていたようだったが、その場に入ってきた俺を気にする様子は全くなかった。
その時、後から俺を追いかけて来た教会の男が俺に言った。
「騙されるな、あの女が吸血鬼の親玉だ」・・・と。
正直に言って、その時の俺は教会の男の言うことに半信半疑だった。
本当に、この女性があの吸血鬼なのか?と。
女が口を開く。
「あら、教会の連中ね。来るのが少し遅いんじゃない?」
「そんなことはどうでもいい。真祖の姫よ、我々教会は貴様のような吸血鬼の存在を、決して許しはしない」
「えぇ、あなた達との付き合いは長いものね。許さないとしたらどうしてくれるというのかしら?まさか、その隣の銀髪の男に私を倒させるつもり・・・ということなのかしら。」
女はそう言って、初めて俺に視線を向けた。
「本当に、君は・・・吸血鬼・・・なのか?」
俺は、きっと「違う」というに違いない・・・そう期待したが・・・。
「・・・・・・ええ、そうね。吸血鬼と言われたら・・・否定はしないわ。でも、あなた達と同じように、私もこの町の死徒を倒す為に追いかけていたのだけれど・・・、とあなたに言っても無駄でしょうけれどね。」
その女は確かに、そう答えた。
俺は信じられずに、目の前の女を見つめた。
教会の男が俺に言った。
「何をしているんだ。君も私と同じ吸血鬼を倒す為にここに来たのだろう?見た目に騙されるんじゃない!あの女は確かに吸血鬼だ。人に仇なす吸血鬼を倒すのに、一体何の躊躇をしているんだ?」
教会の男は言うやいなや、その女に斬りかかった。
一瞬、俺はどうすべきか迷ったが・・・
次の瞬間、男は女の腕の爪から繰り出される衝撃波に吹き飛ばされていた。
女は吹き飛んだ男に追い打ちをかけるべく、次に切り込もうとしていた。
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