「士郎、あなた、そんなんでよく生きて帰ってこれたわね。」
「ああ、確かに俺もそう思う」
遠坂に後で聞いてみて、あらためてそう思った。
「吸血鬼と教会の戦いは今に始まったことじゃないわよ。私は魔術協会に所属しているから、あまりくわしくはないけど・・・吸血種と人類の戦いの歴史は古いわ。士郎が戦って倒せる存在なら、もうとっくの昔に教会が滅ぼしているはずよ。」
「話しというかうわさに聞くだけだったから、実際にはどんな存在か知らなかったんだ。吸血鬼に人を襲わないものがいるなんて、普通わからないと思うぞ?遠坂。でも今回は俺が悪かった・・・よく知りもしないのに、俺から手を出すなんて真似は今度からはしないさ。」
「まぁ、今回は士郎だけが一概に悪いってわけじゃないんだけれど、教会の連中だって全部信用できるやつばっかりというわけじゃないんだから・・・。ほいほい何でも信じるなんて、士郎の悪い癖よ。」
「ああ、反省しているよ。行動するにしてもこれからはよく調べてからにするし、遠坂にも意見は聞いてみることにするよ」
俺は今、傭兵家業をやりながら・・・人助け、いうなれば正義の味方というやつをやっていた。
海
外ボランティアとして救命活動をしたり他のNGO組織に傭兵として雇われながら、フリーランサーとして生活していた。請け負った仕事は、普段は戦場での、
非難民の防衛や生活物資の運搬などが最初は多かったが、俺の体術の身のこなしや魔術の腕を見込んで・・・傭兵まがいの仕事が舞い込んでくることも稀にあっ
た。
そう、あれは・・・突然の話だった。
それは、ある地方で、人を襲う怪物が現れたので助けて欲しい・・・という依頼だった。
今
まで、どんな依頼も頼まれて断ってきたことはない。仕事内容が怪物を倒すという内容なら、聖杯戦争で学んだ戦いの心得や遠坂に鍛えられた投影魔術、普段か
ら弓の延長である銃の射撃や剣術・体術の類は当然鍛えてあったから、自分でも十分遂行できるという自信は少なからずあった。
だが・・・
行ってみれば、そこには自分達と同じ人の姿をしたものが人を襲い、襲われた者はその血を全て抜かれるといういわゆる吸血鬼という化け物がはびこる状況だった。。
俺
は人を襲う吸血鬼を射殺し、襲いかかってくるやつは投影した干将・莫耶(かんしょう・ばくや)で切り伏せて当初は対処していった。最初は吸血鬼なんて人間
とは異種の化け物のことは知らなかった俺だが、戦闘中、そこで俺と同じように戦っている教会の人間と出会い、その男からこの化け物は吸血鬼に襲われたばか
りの・・・低級吸血鬼であるグール(屍食鬼)やリビングデッド(生きる死体)というものだとわかってきた。教会の男の話によると、この町の吸血鬼を滅ぼそ
うとするなら、その親である死徒を殺さなければならないらしかった。
俺は、人間同士・・・魔術師も含めてだが・・・の戦い方なら多少は慣
れていたが・・・、吸血鬼なんて異種の化け物を追い詰める戦術や戦略は持ってはいなかった。だから、教会の男から吸血鬼についていろいろと尋ね、しぶしぶ
だったが、その教会の男から吸血鬼についての知識を得ることが出来た。
死徒を殲滅する為に、毎夜俺はその男と町を歩いて・・・化け物を探していく。
ある夜、グールどもが多く出現し、息つぐ間もなく襲いかかってきたので、次々と斬り殺していく状態となった。グールが多く発生する方向を辿れば、死徒を発見することができるだろうから、好機と判断し・・・その道を辿っていく。
辿って行き着いた先には、奇妙な・・・それでいて美しいと思えた・・・光景が広がっていた。