「また君か。何か私に尋ねたいことがあるのではないか?
いつ落ちるとも限らないんだ。遠慮はいらんぞ。」

―――――「聖杯戦争ってなんだ?サーヴァントとかマスターってなに?」―――――

「・・・・・・聖杯戦争。私にも、どうしてそんな言葉が出てきたのかは分からない。
懐 かしいとも、おぞましいとも感じるだけだ。だが、これだけを知っておけば取りあえずはいい。聖杯戦争とは、私たちサーヴァントと呼ばれる英霊を使役しなが ら聖杯を奪い合う魔術師の戦いのことをさす。このときサーヴァントと契約した魔術師をマスターと呼ぶ。私が手を貸すべき魔術師であり、主でもある。そして 私たちは、この世界にてその戦いに勝利しろ、という命題だけを与えられている。主を勝利に導け、という命題をだ。」

―――――「契約、お前はまだなのか?」―――――

「ふむ・・・契約のシークエンスが発動しないな。ということは、君はマスターではないようだ。
私にとっては幸いだが、君にとって幸いかどうかは、さて。君の人間性によるがね。」

―――・・・・・・、ブゥゥン!!!―――――。

「怒らせてしまったか・・・。嫌われることには慣れているが・・・」

私と契約するのは、あの声の主ではなかったのだろうか?どうやら傷つけてしまったらしい。





―――――・・・・・・―――――

「また君か?」

「何か私に尋ねたいことがあるのではないか?」

―――――「質問など特にない!!!」―――――

「・・・・・・・・・・・・。嘘がヘタだな、君は。ここまで付き合っておいて、それはないだろう。
さっきは悪かった。君との会話が楽しかったので、ついからかってみただけだよ。
君がここに来たのはどうしてだ?・・・・なに、好奇心を恥じることはないさ。知的欲求は人間らしさの証だよ。」

しばらく声が届かなくなった静寂に、
自分ははこの世界の来訪者を心待ちにするようになっていたことに気づいた。

―――――「・・・せっかく来ているんだからコーヒーぐらい出してよ。」―――――

「ほう、君はコーヒー党か。私も元来コーヒー党だったんだが、いつからか紅茶党になっていてね。
・・・なに、紅茶が好きな人だったんだよ。入れ方も叩き込まれたんだが・・・。
そちらの味わいはどうだ?豆の質は落ちていないかね?」

―――――「何故戦うのか知りたいね。」―――――

「・・・・・・まあ、そうだな。たとえ戦うだけの役割だとしても、この世界の根幹に何があるのか、興味はある。
・・・・・・君とは気が合いそうだな。」

自 らの主を生き残らせるために・・・いかに勝つのか、戦う戦略を考えることが日常の常だった。戦うその先で聖杯を手に出来るサーヴァントは稀な為に、聖杯の 正体をサーヴァントが知る機会は基本的にはない。私の記録の中からたぐり寄せられた聖杯の情報も、マスターには申し訳なかったが・・・ろくでもない代物 だった。今回も・・・戦ったその先のことまで・・・自分は考えることなど、今まではなかったのだが・・・

この来訪者とのちょっとした雑談のおかげで、・・・余計だが、思索を巡らすようになっていた。




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