「よほど暇なのだな。これほど度々くるとは・・・まあ私も暇だ。退屈しのぎにはなる。」

―――――「ここにきてどれくらいが経つんだ?」―――――

「この世界には時間の概念が希薄だ。どのぐらい、とは明確には答えにくいが・・・
まあ、そちらの時間で言えば瞬きほどの永遠だよ。」

「・・・君か。なんだ・・・人の顔をマジマジと見て。」

―――――「なんとなく、何・・・考えてるのかなって思って。」―――――

「私はそんなに物思いにふけっていたか?・・・何を考えていたものか。自分の事すら分からないとは、まだまだ未熟だな。サーヴァントには過去も未来もない。主を得ていないサーヴァントが考える事なぞ、何の意味もないだろうさ。」

―――――「君の話は興味深いよ。この世界は不思議と惹かれるものがある」―――――

「私の話?ふふ、たしかにそうかもな。サーヴァントと与太話をする機会なぞ、
そうはないからね。見ての通り、私の存在以外、何もない世界だ。特に何か興味を引くようなものもないだろうに。
それとも、そんなにこの空虚感を味わいたいのか?」


世界と契約した代わりに、自分が払った代償・・・正義の味方とは、聞こえのいいきれいごと。
主の為に、瞬くような一瞬の時を戦い抜き、呼ばれるたびにその時間を積み重ねる・・・永遠の時間の牢獄。
ただ主を勝たせる為のみに戦い、世界を救うという大儀の下に救うべきはずの僅かな人達をも消し去る。
それ以外は何もない・・・そんな世界を、誰が理解できるだろうか?


その為にどれほどの時間が経ったかはわからない。・・・誰を救ってきたかも・・・思い出せない。

永遠には慣れているが・・・・・・

「そうだな。・・・・・・この際、君がマスターであれば楽なのだが。」

―――――「自分でよければ喜んで。」―――――

「ははははは!いや、冗談だ。残念ながら、君はマスターとしてこの世界に登録されていない。」

君は・・・何も知らない。私が何をしてきたのか・・・

・・・・・・場に呼ばれながら、誰にも呼ばれない、というのは、思いの外辛いものだな。








またあの声を・・・

いつの間にか探すことが習慣になっていた。

この静かな世界での他愛もない雑談が当たり前だと感じるようになった・・・ある時。

ふと周りを見渡す、、、が、姿どころか声すら聞こえない時が・・・・・・・・・続いた。



――――――――ジッ!――――ジジッ!――――ジジッ!――――

「・・・・・・ん?ああ、君か。なに? ずっと前からここにいた?」

――ジジッ!――――ジジッ!――――「ここに、、、」――――

「君のイレギュラー接続に・・・限界が訪れたか・・・?本来、通常接続権限を持って
いれば接続が不安定になることはないのだが。」

――ジジジッ!―「接続を安定させるにはどうしたら・・・いい?」―ジジッ!―

・・・・・・、私がこの世界で果たすべき役割を知り、契約に適合するか否かの判断が終わったのだな・・・。
聖杯が君との接続を、終了させようと・・・している。



・・・君のせいではない。






「いるのか?見えないが・・・いるんだな?そこに気配を感じるよ。」

―――ジッ――――ジッ――――ジッ―――――。

「もうノイズしか聞こえないが・・・・・・、残念だ。あるいは、君となら・・・・・・」

思えば、この会話も楽しかった。もしかしたら・・・、と思った時もあった。

―――ジッ――――ジッ―――――――。

この会話もじきに終わってしまうだろう、だから・・・礼をいっておかなければならない。

見えなくても、きっと聞いていると、信じられる。

「短い間だったが、楽しい時間だった。せめてもの感謝として、礼を言っておくよ。」

―――ジッ――――ジッ――――――。

「この霊子虚構世界で、また・・・会う・・・かもしれないが・・・、その時は・・・・・・供に・・・・・・」

――ジッ――――――――――――。

「供に、戦う・・・・・・同志と、して」

―――――――――――。

――――――――


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