BLACK  OUT

ムーンセルの聖杯の中はまるで水の中のようだった。

目に映るのは、一面の青ときらめく白い光。

その一つ一つの光がこの聖杯に降り積もる世界の情報であり、私というちっぽけな情報を飲み込もうとする。

急がなくては、、、

「願いは・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

SE.RA.PHで出会った友人を現実世界に戻し、聖杯による戦争への介入の停止、そして聖杯戦争を私で最後にする為に、、、封印

、、、

膨大な情報の嵐の中で、私の自我は長くは持たない。

気を抜けば、私という情報も聖杯と同化するだろう。

目を閉じ、聖杯に伝えるべき命令を頭に思い浮かべる。

一瞬のチャンスに、私は正しく・・・入力できたと・・・思う。



・・・・・・終わった。

そう思った瞬間から、体から力が抜けてゆくのを感じる。

・・・・・・怖い。

自分もこれから死ぬのだろうか?

両腕で体を抱きしめ、思わず赤ん坊のように体を丸める。

自分ごときがここまで聖杯戦争を戦い抜き、ここまで来れたのだ。

上出来だと思う。

勝ち抜いて来るたびに見た、対戦者達の消えゆく間際の姿を思い出す。

自分だけ死にたくないと望んでしまうのはきっとずるいのだろう。

白い光は次々に私の中に入っていき、蜃気楼のように自分の体が透けていく。

走馬燈のように、自分が巻き込まれたこの戦いの最初の情景が目に浮かぶ。

無機質な人形の足下で倒れている自分、、、

死にたくないと、、、諦めたくないと、、、そう願ったあの時のようには、もう・・・




薄れゆく意識の中で、一面の青い海の中で目の前に突如赤い色が浮かんだ。

「マスター、ファイルを照合すると、君には未来を託す体があるようだがね」

「・・・アーチャー?」

友人を託してこの海の外に残して来たはずなのに・・・自分は消える覚悟をしてここに来たはずなのに・・・。

消えゆく運命を少しでも引き延ばし、その恐怖を紛らわせにやってきた私の赤い従者の心意気に意識が引き戻される。

「なにこちらのことは気にすることはない。私は次にお呼びがかかるまで待てばいいだけのことだからね」

「あなたは、、、」

私以外の余計な異物が入り込んだせいだろうか・・・私を溶かしていくはずの光は、目の前の赤い従者の情報を伝えてくる。

「エ・ミ・ヤ」







「聖杯の力か・・・私の過去を・・・見たんだな。君が思っていたような者ではなかっただろう?」

アーチャーは相変わらずの自嘲めいた口ぶりでこちらを見下ろす。

ふいに、哀しさと懐かしさと愛しさと、、、様々なものが入り交じったその表情を確かめたくなって、、、

伸ばそうとした自分の手が消えかかっていることに私は気づいた。

もう片方の令呪のある腕をアーチャーに伸ばすと、それに気づいたアーチャーも消えかかった私の体を両腕で支える。

冷たい水の中で温かさを伝えてくるアーチャーの顔の感触を確かめて・・・彼の後頭部に腕をまわした。

そして、、、








アーチャーのこちらを見つめる表情が崩れる。

「マスター、君は・・・・・・」

















「君の底抜けの・・・そうだな、そういう心のあり方に、私は救われてきたのだな。」















くしゃりと音が聞こえてきそうなほどに私はアーチャーの髪をかき混ぜた。

掻き上げられていたアーチャーの髪が下ろされて、水の中で漂う。

聖杯が伝えてきた英霊エミヤの過去の姿と髪を下ろした目の前のアーチャーの姿が一致したことを確かめて、私は自分の声(召還の呼びかけ)を聞いてくれた人がこの人であったことを嬉しく思った。

「ありがとう。助けてくれて、、、どうしてアーチャーがわたしのような・・・才能もない・・・無力な人間に契約してくれたのか、今、わかった気がする。」

「そうか、私も君のようなマスターと出会えて嬉しく思うよ。人間としての正しさを・・・かつての私の願いを思い出させてくれた。特別手当はもらいそびれたがね。」

苦笑しつつ、最後の令呪をアーチャーの目の前に差し出し、・・・願う・・・

「これがわたしがマスターとして出来る最後のお礼。私と一緒にいてくれてありがとう。」

焦点はぼやけ、定まらなくなった視線を精一杯アーチャーに向けて私は言った。

「マスター、礼は十分にしてもらったよ。何を命令するのか知らないが、それはもう意味を成すことはない。それに私に望むことは・・・」









わずかに引き戻された意識ももうすぐ限界が来そうだ。
アーチャーのおかげで、自分がこれから消えるということを少しだけ忘れることができた。

この後、このSE.RA.PHで生きてきた私は消えて、現実世界の私が目を覚ますらしい。
それがどういうことなのか想像もできないけれど・・・

本当ならここにくる前に終わっていたのだから・・・
今まで自分のような無力な人達に力を使い、自分の為に使わなかったエミヤという彼の為にささやかだが私はお返しをしようと思う。

騎士王・・・饒舌な口ぶりでその時は気づかなかったが、そういえばアーチャーは詳しく語っていた。
ムーンセルの聖杯の光が伝える、アーチャーの中に今なお鮮明に焼き付く強い記憶。
聖杯から解き放たれるように・・・その行く末を見届けたかったと彼が強く願う人。

SE.RA.PHで自分が迷った時にいつも助言を与えてくれて、正しいと自身が信じた道に迷わず進むその凛とした姿勢が眩しかった私の友人。
今、聖杯の外にいるわたしの友人は彼が元々いた世界の彼女とは別の存在であり、もう一度未来の私の友人となると約束してくれた。彼が元々いた世界から残してきた彼の恋人は・・・

・・・ならば・・・

サーバントは魔術師に呼ばれて戦うだけの存在。

サーバントが自身の力でめぐり会うことはおそらく・・・不可能。
けれど、聖杯とマスターの令呪の力なら・・・その可能性ぐらいは・・・出来るかも・・・しれない。

彼が・・・想いを残した・・・人の・・・ところへ・・・・・・

ムー ンセルの聖杯の・・・システムに・・・令呪の魔力を・・・送り・・・、アーチャーが・・・そこに・・・・・・辿り・・・・・・着け・・・・・・る・・・よ う・・・に・・・・・・・令・・・・・・・呪に・・・・・・・・・・・・・強く・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・願う・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



強く輝きだした令呪の光と供に、、、私の意識も、、、、白く、、、、、










                            続き  

Fate/EXTRA、弓×(女)主人公。 トワイス戦終了後の聖杯にてのお話のはず。 ネタばれになると思うので、それでもいい方は読んでやってください。 女主人公が最後の令呪を使う設定はねつ造です。 成り立つかどうかも微妙です。

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