誰にも理解されない、故に・・・・・・我を例えるその言葉は・・・・・・
『怪物』
「大好きだから、食べてあげるの。今日の自分の命をつなぐ為に、他の命を頂く。それと同じだよ」
妻として愛し仕えようと誓った女(ひと)の狂気に堕ちていようとは自覚もないその言葉を、私は静かに受け入れる。
誰もが生きる為に他者の命を奪っているのだ。
他者の命を糧に、その命を食すことで自らの命を支えているその普遍の真理のどこに間違いがあるというのか?
狂言の中に潜むわずかばかりの真理に、この女(ひと)の人としての救いの可能性を私は垣間見る。
だからこそ、私はこの女(ひと)に食べさせてあげることができない。
自分と同じ狂気の沙汰に堕ちているからこそ、愛していると心から叫べる。
例えその愛が、我を最期に喰らいたい・・・・・・そう呟いて憚らない、歪んだ愛だろうとも・・・・・・。
だからこそ、私と同様に・・・・・・この・・・・・・狂気に堕とされ、誰からも理解されないこの苦しみを・・・そこに至った・・・・・・歪んだ愛を、私は心の底から愛する。
幾人もの人間を、我が信仰の名の下に串刺しの刑に処してきた。
我を怪物と讃える者達を流血の地獄に突き落とす瞬間こそ、わが狂気を鎮める歓喜である。
自らの愛玩動物も、両親も、自らの血を引き継いでいるはずの我が子すらも、、、「食べた」とのたまう愛する女(ひと)のその虚言。
現実の家族から切り離されて、夢の中で生きざるを得なくなった彼女の狂気こそ、私は心から愛する。
故に、「全てを愛したら、みんな食べられるんだよね。」、そう、聖杯に願う我が妻の願いを叶えよう。
その歪んだ心に、我が槍によって捧げられた聖杯の力によって愛する女(ひと)に愛が注がれ・・・・・・満たされるならば、、、愛する私の妻は・・・・・・飢えという狂気の底から救われるのかもしれない。
だからこそ、今は、愛しき女(ひと)に食べさせてあげることができない。
食べたいと言いつつ、結局、食べない私の愛しき女(ひと)。
それとも、敗者を我が妻に食べさせないでいるのは、
狂気の血潮に狂う私と同じ狂気にいつまでも染まっていて欲しいと願いながら・・・・・・私と同じように救われない狂気から、自分は既に手遅れだけれども、愛しい妻を救いあげたいとそう願う私の願いだからだろうか?
EXランサー×ランルー ランルー君と契約したランサーの想い