森の精霊4
視界は次第に薄く暗くなっていき、立つ気力は抜けていく。
あぁ、オレは負けたんだな。
決戦の結果は無残なもので、マスターとの方針のずれや軍隊をたった一人で相手にする為に編み出した自分の戦い方は肉弾戦で
は多少不利な面を抜きにしても、その少女のサーヴァントは強かった。
オレなんかと組んで、マスターもさぞ不運であったことだろう。
かつて守ったはずの村人からの罵倒を思い出しながら、ダンの旦那から恨み言の一言を覚悟していた。
だけど消滅が決定付けられた今わの際に脳裏に響いたのは、自分のマスターからの予想もしない労いの言葉だった。
「アーチャー、すまなかった。私がお前を理解していたなら、もっと有利に戦えたものを・・・」
かつて生前受けた守っているはずの者達からの罵詈讒謗。
だがダン卿、彼は負けたからといって、オレを恨まなかった。
信じても裏切られるそうなるとわかっていてもそのまま戦わざるを得なかった名もなき森の守護者。
初めて信じようとしたものから理解し信じてもらえた。
「いいってことよ。オレも旦那のような生き方をしてみたかったんだからよ」
勝敗とは関係なく、相手への感謝を伝える。
それがオレの欲しかった、人を信じる心。
マスターへの別れの挨拶は終わり、もうすぐオレがここにいられる残り時間もあとわずかとなった。
地に付し倒れたその先に自分を犯していく闇。
それにオレは抗うこともできずに耐えていると、頭が浮き上がり暖かく柔らかい弾力で支えられた。
戦いに勝ったはずの少女が膝枕を自分にして泣いている。
自分との契約を断ったはずなのに・・・。
だが今だけはそれがオレには嬉しかった。
「オレのことは好きじゃなかったんじゃないかな?」
「好きよ、あなたのことが・・・。最初からあなたと契約できたらよかったのに・・・ごめんなさい」
(・・・君にもっと早く出会っていたら、、、)
この少女は出会った者全ての願いをその心に映してしまう、それがサーヴァントであれだ。
だからこそ契約外のオレにも心(愛情)を分けてくれたのだろう・・・赤い外套にはもったいないぐらいだ。
遠のく意識の中で感じた少女の唇の感触は・・・とても柔らかく甘く、生まれ変わってまた召還されるならこの少女のような人間と再び出会い、また生きて(契約して)みたいと思ってしまっていた。
「オレも・・・君が好き・・・・・・
END
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