憎悪をむき出しにした声におびえる マスター。
顔を見なくとも・・・その口調・マスターとの会話の内容から窺える魔術師としての高い力量。
どうやら、この声の主である魔術師と仮にも我がマスターとなったウェイバーは教師と教え子の間柄らしい。
・・・自分を召還するはずの聖遺物を、あの声の主からこの坊主が奪ったので、自分はこの小さなマスターの隣にいることになったらしい。本来なら、余は・・・この青年ではなく・・・あの声の持ち主と契約する予定たったことが・・・会話から窺えた。
殺意を帯びた声に萎縮し・・・恐怖を隠すことすら忘れた我がマスター。
ウェイバー・ベルベット
魔術師としては、恐らく未熟なのだろう・・・。
契約開始時に魔術回路を繋げた時から自分へと流れこむ魔力の量は、自分を支えるには明らかに・・・足りない。
だが、自分は・・・この頼りなく未熟な、小さなマスターに好感を覚える。
かつて世界を征服せんとして幾多の国を駆けめぐって来た記憶。
自分を信じてついてきた大馬鹿者達の・・・それぞれは例え小さな力であろうとも、それらを集めた皆が我が力なり。
征服王たる自分にとって、マスターとしての資格とは、その持てる力の大きさが問題ではないのだ。
例え、ひ弱でも・・・その力がとても小さなものであったとしても、自分を信じてついて来た者を・・・余は、彼等のその全てを受け入れてきたのだ。
少なくとも、戦場に姿すら現そうとしないこの声の主よりも、この小さな魔術師の方が余にとってはマスターにふさわしいと感じる。
イスカンダルは・・・恐怖におびえるウェイバーのその肩に、そっと手を置いた。
勇気を出すがいい。
坊主、お前には余がついているではないか?
ふるえるその肩から、・・・次第に緊張がとれていくのがこの手に伝わってくる。
そうだ、それでいい、坊主。
お前は余のマスターになったのだ。それを・・・忘れるな?
坊主に安堵の念が宿ったことを感じ取れた余は、再びこの声の主に冷や水を浴びせるべく、次の言葉を何にしようかと思案するのだった。
そう、___貴様は余のマスターにはふさわしくない、、、とな。__
イスカンダル&ウェイバー 埠頭での戦いにて、ケイネスとウエィバーが会話する場面にて