「手遅れか・・・・・・・・」
世界には人類を脅かすものが時として生まれることがある。それが天災規模にまで広がらないように抑える存在として世界が欲したのがガーディアンカウンター。
私には大変ありがたくない話なのだが、私が反英雄な故なのか信仰心が薄い英霊故なのか・・・聖杯によるサーヴァントとしてではなく、世界に抑止の守護者として呼ばれることがある。
赴けば、たいがいそこは人は死に絶え、焦土と化している。当然見たくもないものを見ることになるし、人は死に絶え・・・生き残った人達も、災害を最小限に抑える為に、この手にかけなければならなくなるだろう。
私は、こんな場面は何度と出会ってきた。今更、驚くこともないんだが・・・・・・
その荒れ果てた地獄の大地で、存在するはずのない・・・人間が立っていた。
・・・・・・女だ。金髪の朱い瞳を持つ・・・女。
どこかであったような気もするが・・・・・・・・・、思い出せない。
「あら、あなた」
「誰だ?」
「こんなところにやってくるなんて、あなたも物好きね。」
「君ほどではないさ。それにしても・・・・・・この惨状はまさか、君が・・・・・・という訳ではないだろうね?」
「まさか、私はここの元凶を追いかけていただけよ。」
「・・・・・・、そうか段々思い出せてきた。君は以前出会った吸血鬼、確か真祖の姫・・・・・・だったな」
「そうよ、あの時に私を殺した責任を・・・・・・とりに来てくれたのかしら?」
「その話か、私としては君がこの土地の元凶ではない以上、今ここで君と戦う理由はないのだが・・・・・・。どうしてもと言うのなら、私も考えさせてもらうよ。」
「そうね。私もね、今そういう気分じゃないし・・・」
殺伐としたこの状況を、超越した存在である彼女なら私と同じように慣れているのは当然なのかもしれない。
平然と会話を交わす。
「それにしても酔狂だな、人間の為にわざわざ君が出向く必要はないだろうに・・・・・・」
「そうね、以前の私だったら気にしなかったでしょうね。志貴と出会う以前の私なら・・・」
「・・・・・・、あの青い瞳の少年を君が気に入っていることはわかるが・・・・・・」
「あなたも人間だったのでしょう?・・・志貴と同じ。だから、ここに来たのではないの?」
「私は・・・・・・」
「あなたは、人の愚かしさを憎んでいるようだけれど、志貴と出会って・・・・・・私にはその愚かしさも含めて・・・・・・愛しいと思える。人の浅ましくも懸命に生き延びようとするその姿を、私は笑うつもりなどないわ。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「私は人の行く末を見届けるつもりだけど・・・あなたは?」
真祖の姫は私の返事を待たずに歩きだした。

人が在る限り、争いは永遠に終わらない。
己を滅ぼすものを、自ら創り出す、・・・・・・その・・・・・・人のその愚かさを、何度も見せつけられて、
それでも、その尻ぬぐいをせざるを得ないこの役目に終わりはないのだけれど・・・
真祖の姫、人を止める為に生まれながら・・・人の末を見守る者。
私と君しか立っていない、その地獄の大地で・・・・・・
それでも紅蓮の炎の中で微動だにせず・・・人の愚かしささえ愛しいのだと告げる君を見ていると、
この煉獄の地獄に、何度も独りで歩く孤独を・・・・・・
月の光を見ることで、私は独りではない・・・・・・そう、錯覚してしまいそうだった。