何故、気になってしまうのだろう?
いつから、自分は彼のことを気になっていたのだろうか?
慎二のような手合いは、いつでも、どこにでも・・・・・・いる。
私の魔術師としての高い能力と魅力にいい寄ってくる男ども、慎二もその男どもの一人だろう。
彼のような男に、内心私は蔑みの念を感じるけれど、ハッカーの能力だけは認めているから、一応その鼻柱をへし折ることだけは止めていた。
慎二という男の隣に、その友人としてついていた彼も「類は友を呼ぶ」の言葉どおりの人間かな? と、聖杯戦争開始前に戦う前の準備として知っておきたかった。
一応、もしかしたら彼とも戦う可能性も否定できなかったから。
私は聖杯への道を切り拓くのも、自分の意志と力だと、その覚悟は当然のごとく既にしている。
だから、私は・・・・・・ただ運命だと嘆いていて何もしない愚か者は嫌いだし、運命は自分の力で切り拓くものだと信じている。
だから、相変わらず頼りない間の抜けた表情で自分の意志が定かですらない彼を、この先自分にとって気になる存在になることはないだろうと思っていた・・・・・・。
けれど、その彼の頬の柔らかさ、温かさは、、、
私に世界を変えたいと願わせた、この聖杯戦争で戦う目的を私に与えてくれた、私を育ててくれた人達の教えてくれた人の心の温かさ、それと同じものを感じさせる。
片鱗は、出会った最初から、感じていた。
周囲は全て敵、聖杯は戦って相手の犠牲と引き代えに手にすることが必然のルール(真理)である以上、あんな甘い精神では生き残れるはずもない、そう思っていた。
けれど、彼はその甘さを持ったまま聖杯戦争を生き残っていく。
私は、私を育ててくれた中東の大馬鹿野郎達が、とても大好きだ。
私に聖杯戦争なんて殺し合いを決意させたのも、ひいては私の大好きなみんながずっと笑顔でいて欲しいと願ったからだ。
だから私は、例え魔術師のあり方が非情であることが望まれていようとも、その人間らしい笑顔の源を私は大切にしている。
だからだろうか?
この殺し合いが当然とされる聖杯戦争の中で、人間らしい心を失わないでいる彼のことが気になるのは・・・・・・。
いつか、自分と殺し合うかもしれないのにその彼をつい手助けをしてしまうのは、見殺しにすることが私の信条に反することだからなのだと自分を誤魔化して言い聞かせる。
この私の気を引かせるなんて大したものじゃない。
だから、話を聞いてあげるわ。
私を見ても、女としてまるで何も感じないその様子にも何だか腹が立つことだし・・・・・・。
男主に構うリンの胸中